ポジティブ思考の欠点ネガティブ思考の利点

 

ネガティブな人は無能!で、ポジティブな人は有能!という風潮・・?これってほんとにそうなのか?臨床心理学の実験結果を見てみましょう

 

思考停止のポジティブ<行動するネガティブ

 

 

ダニング=クルーガー効果

仕事がイマイチな部下に、未熟さに気づかせるのが難しい理由がわかりますか

 

ポジティブすぎる部下に手を焼く

ポジティブすぎる部下に手を焼く、そんな経験はありませんか?

 

ポジティブ心理学が提唱された2000年以降、ポジティブになろうといったスローガンが世の中に広まりすぎたため、もともと楽観的すぎる人、物事を深く考えない人による勘違いが横行している感があります

 

仕事ができず初歩的なことも、よくわかっていない部下がなぜか自信を持っていたりするのです

 

例えば、何らかのプロジェクトを立ち上げることになり、メンバーを組む際に、どう見ても力不足とみなさざるを得ない人物が、自信満々の様子で自分を売り込んできたりします

 

あるいは、仕事でミスの多い人物にいくら注意しても、「はい、わかってます」と言うものの、深く受け止める様子がなく、平然としており、こっちの言葉が染み込んでいかず、それでまた同じようなミスを繰り返したりします

 

このようにポジティブすぎる部下に手を焼く管理職がけっして少なくないように思います

 

前項で解説したように私たちは皆ポジティブイリュージョンを抱え、自分の社会能力や知的能力を過大視する傾向があるわけですが、実はそうした傾向は能力の低い人ほど著しいことが、心理学の実験によって証明されているのです

 

能力の低い人は、自分の能力の低さに気づく能力も低い

 

何故かできない部下が自信たっぷりで、注意やアドバイスの言葉がまったく響かない。多くの管理職や先輩社員の方も感じていると思います。たぶん…

 

そのことを実証してみせたのが、心理学者ダニングとクルーガーです。いくつかの能力に関するテストを実施、同時に自分の能力について自己評価させるという実験が行われました

 

その際、各能力ごとに、

・上位4分の1の最優秀グループ

・その次に位置する平均より少し上のグループ

・さらにその次に位置する平均より下のグループ

・下位4分の1の底辺グループ

に分けました

その結果、どんな能力に関しても、底辺グループの人たちは、下から10%程度の実力しかないのに、本人は自分の能力は平均以上とみなしていました

 

そうした過大評価の程度は成績が下位のグループほど大きく、最優秀グループではそのような課題評価は見られず、むしろ逆に自分の能力を実際より低く見積もる傾向が見られました

 

このような心理傾向をダニング=クルーガー効果といいます。まずは自分の能力不足、スキルの未熟さに気づくこと、それが成長への第一歩といえそうです

 

防衛的悲観主義

不安が強い人の方が仕事ができると言うのは本当でしょうか

 

 

成果を出しているのに不安の強い人

前項のポジティブすぎるタイプとは逆に、ちゃんと仕事ができているし、成果も出しているのに、非常に不安が強いタイプがいます

 

あなたの周りにもいませんか?

私の仕事仲間のひとりで、プレゼンを任せると、準備段階で「ここまでできたんだけど」としょっちゅう見せにきて、確認やアドバイスを求める

 

もうこれで大丈夫だろうと思っても、本人はまだまだ不安なようで、色々とまた、アドバイスを求めてくる

 

もっと自信を持っても良いのにと思うのに、どうも不安から抜け出せないのです

 

このようなタイプの同僚や後輩がいると、「いつもちゃんとできてるんだから、もっと自信を持とう!ポジティブに行こう!ポジティブに」と言いたくなるかもしれませんが、そのような声掛けは禁物です

 

不安が強いからうまくいっているのであって、不安が取り除かれてしまったら、せっかくうまくいっている仕事の流れが乱れてしまう可能性が高いのです

 

そこで参考になるのが、心理学者ノレムとキャンター防衛的悲観主義と言う概念です。それは、実際は成果を出しているのに今度はうまくいかない、かもしれないと悲観的になるタイプのことです

 

このような防衛的悲観主義者は、一般に成績が良いことが多くの研究により示されています

 

不安だからこそ用意周到になれる

 ノレムによれば、防衛的悲観主義者は、これから起こることを考えるときには徹底してネガティブに考え、不安を持ちやすく、最悪の事態をあらゆる角度から想像しては失敗するのではないかと恐れるのですが、結果的には最もうまくいくタイプのようです

 

悲観的で不安が強いために、用意周到に準備を行い、あらゆる状況を想定し、失敗についてもあらゆる想像しながら対処法を検討しておくことで、物事を滞りなく進行させます

 

先程のプレゼンの事例で言えば、「先方のが知識があったら大変だと!」とあらゆる質問を想定してどう答えるかを考えます

 

それにより、プレゼンが成功する可能性が高まります。つまり、将来のパフォーマンスに対して不安があり、楽観的になれないことが、成績の良さにつながっているのです

 

このような防衛的悲観主義者は、不安だからパフォーマンスが良いのであって、楽観的になって不安が消えると、のんきに構えてしまい、準備が疎かになり、かえってパフォーマンスが低下してしまいます

 

面白いことに、それは実験でも証明されています

 

ネガティブ思考のプラスへの意外な効果。しかし、熟考や行動も伴わせることが大切だとわかりますね